「自分たちが住んでいる町を知り、地域愛を育んでほしい」
そんな思いから、前橋市下新田町自治会が地元の歴史や人々の暮らしぶりをまとめた「わが町しもしんでん」を発行しました。
編集委員会(10人)を立ち上げ、 聞き取り調査や資料集め、会議や執筆、推敲を繰り返し、2年かけて約200ページ(A4判)にまとめました。
1500部を作製し、各1300世帯に配布したほか、前橋市立図書館や東分館に寄贈しました。
編集委員のメンバーは本を通して、地元の人たち、特に若い世代が郷土への愛着を深め、地域づくりにつながることを願っています。

長老の話から昔の地域が蘇る
まず編集委員が取り掛かったのは資料集め。2017年11月から数回、地域に回覧板を回して、家で眠っている古文書や写真といった資料がないか呼びかけました。
そうした中、大きかったのは、記憶力に優れた90歳を超える長老が委員に加わってくれたこと。写真を提供してもらい、昔の地域を鮮明に語ってもらいました。
メンバーは月に2度、地元の下新田町公民館に集まり、編集会議を開き、1日に4時間の議論を重ねました。
編集員の牛込住夫さんは「まずは自分たちがどんな地域に住んでいるのか足元から知りたかった」と、本づくりの動機を語ります。
正確を期すため、歴史検証には大きな時間を割きました。
火の見やぐらの半鐘が盗まれたエピソードも

こうして出来上がった本には、町の成り立ちから書かれています。
下新田村の〝開祖〟となった牛込大膳が慶長9(1604)年、天狗岩堰の工事と新田の開発に功績があったことから、秋元但馬守泰朝から書状と百石を授与され、この年に末風村が上新田村と下新田村に分かれたと紹介しています。
そのほか興味深い記述が盛りだくさん。
- 下新田に電灯が点ったのは大正5、6年
- 水道が引かれたのは昭和34年ごろ
- お葬式は前橋市と合併するまで土葬式
どんど焼きやひな祭り、迎え盆など、年中行事にも触れながら、昔の人の暮らしが伝わる内容に仕上げました。
昭和30年代のエピソードとして、火事の時に鳴らす、火の見やぐらの半鐘が盗まれた事件も載せました。
地域を見つめ直す作業
こうした編集作業は、自分たちの地域を見直す機会になりました。
編集委員長を務めた中村盛一さんは「自分たちも調べるまで知らなかったが、地域にはこんなに価値あるものがあったんだと、あらためて思った」といいます。
本を各世帯に配布すると好評で、編集員の牛込瑛さんは「『よくここまで調べたね』と言われた。住民からは高い評価をもらっている」と手応えを感じています。
3月1日に勉強会
本をつくって終わりでななく、今後の地域づくりに活用していきます。中村さんが講師となり、3月1日午前10時から11時半まで、下新田町公民館で勉強会を開きます。参加費無料。

勉強会は下新田町だけでなく、町外から参加も可能とのこと。
「わが町しもしんでん」は市立図書館などに置いてあります。
史実にこだわったという内容は、文化財や風俗の古い写真をふんだんに使ったり、住民から丹念に話を聴いたりと、非常に時間をかけてつくったことが分かる労作。
天狗岩用水をはじめ、前橋の歴史と深く関わる遺産の解説もあります。町外の人も楽しく読めると思うので、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
前橋市下新田町公民館
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