前橋市の大利根町公民館は、行政ではなく自治会が運営する公民館です。
職員を配置し、生涯学習を支援、高い稼働率を誇ります。
使用料を支払う有料来館者は年間延べ約1万人、利用料のかからない自治会活動を含めると2万人超が訪れます。
2年前にはドイツ製の階段昇降機を導入したほか、防災備品も充実。進化を続ける交流拠点を訪ねました。
「他人同士」が縁あって第二の故郷づくり
「公民館はいつ建てられたのですか」。15年ほど前から、ここで働く吉田知江副館長に聞くと、厚い広報紙のファイルを取り出してくれました。そこには昭和51年、大利根町公民館の完成を知らせる記事が。くしくも大利根住宅団地の入居が始まり、ちょうど10周年に当たる年でした。
当時の地元市会議員、浅井直行さんが広報紙に寄稿しています。公民館に寄せる住民の気持ちがよく出ているように思いました。引用します。
昨日まで、まったくの他人同士であった私達が縁あって、この大利根の地に住いを定め、第二の故郷づくりを目指して蒔いた一粒の種が、こんなに大きく実るとは、なんと素晴らしいことではありませんか。
大利根住宅団地は県企業局が造成した第一号の大規模住宅団地。
田畑を切り開き、地縁・血縁のない人たちが居を定め、出来上がった町。だからこそ、コミュニティーの場が必要であり、公民館を建てたのではないかと推測できます。当時、行政からの補助もあったのでしょうが、1世帯あたり3万円を徴収し、建設費に充てたといいます。
活発な文化・軽スポーツ活動
現在職員は吉田さん含め3人。平日1人が詰め、管理運営を担います。人件費は、いずれも公民館の使用料で賄い、住民から集める自治会費は使っていません。受益者負担による独立採算の運営がなされています。
活動団体はバラエティー豊か。ダンスや囲碁、ヨガ、太極拳といった大人向けのものから、体操教室や学習塾といった子ども向けのものもあります。
事務所を出ると、ホールの中から、にぎやかな声が。スマイルボウリングのサークルが練習をしていました。ピンが倒れるごとに歓声が響きます。みなさん元気いっぱい!
ドイツ製の階段昇降機を導入
一方で、施設の建設から40年以上が経ち、利用者の高齢化も進んでいます。このため2年前に、足が悪いお年寄りでも2階に上がりやすいよう、階段昇降機を導入しました。座っているだけで2階に上がれる、ドイツ製のすぐれ物。吉田さんに実演してもらいました。機械に腰を下ろし、操作すると、取り付けられたレールに沿って、ゆっくり、ゆっくり進んでいきます。これなら安心ですね。
最後に防災の備蓄品を置く倉庫を見させてもらいました。ヘルメットや担架、ブルーシート、バケツのほか、声が遠くまで聞こえるようにメガホンまであります。非常食のアルファー米は賞味期限を記し、ダンボールの中に保管されていました。
大利根町は設備が充実しているという印象を受けました。「こんなに持っている自治会はほかにもあるのでしょうか」。福島昇自治会長に尋ねると、「ここまであるところは少ないかもしれないですね」。お金の問題もあります。そのことについても質問すると、「行政の補助金を活用しているため、ほとんど自治会の持ち出しはありません。だから反対も出ません。補助金のことを知らないと損をしてしまいます」。
福島さんは県庁の元企画部長。行政の補助金に精通しています。補助金に強いことは、これからの自治会長が持つべき力の一つかもしれない。そんなことを感じました。
8月5日には、大利根町の夏祭りが公民館前の大利根中央公園で開かれます。大利根町という町名ができて50周年。今回は、例年以上に力が入っています。新しく購入したやぐらは現在、公民館の倉庫で保管されており、本番にお披露目されます!
-
おすすめ記事もうすぐ大利根町50周年夏祭りが始まります! 夜9時まで大利根中央公園
前橋市の大利根町50周年記念夏祭りが5日午後4時、大利根中央公園で始まります。 節目の今年は、軽くて組み立てやすいアルミ製やぐらを購入。太鼓の皮も張り替えました。通常、1カ月ほど前から行うお囃子の練習 ...
続きを見る