「コンビニカフェ」の定着や、ちょい飲み需要に対応するペットボトルコーヒーの流行をはじめ、何かと話題の多いコーヒー業界。そして今、味を左右する「焙煎」に注目が集まっています。大手のキーコーヒーが都内に焙煎を体験できる新業態の店舗をオープンするなど、新たな波が来ています。
前橋市上新田町にある炭火自家焙煎珈琲窯「マリドンコーヒー」で、焙煎の現場を取材させていただきました。
マリドンコーヒーは、田村さん夫婦が営む小さなコーヒーのお店です。豆の量り売りを基本に、ドリップしたコーヒーも提供。300円の本格カフェ・マキアートをはじめ、コストパフォーマンスの高いお店として以前にも紹介しました。
もともとバイク店を経営
ご主人の田村隆央さんは、もともとバイク店を営んでおり、ものづくりが得意。自ら製造した焙煎機を使用します。
炭の燃え方が安定した頃合を見極め、豆を入れるのですが、焙煎する前なので豆は白色。今回はブラジル産を中心に4種類の豆を配合しました。
豆を煎る容器は小型のプロパンガスのタンクに、いくつもの穴を開けて製作。
熱を均一に伝えるため、これが電動のトルクモーターによって回転します。
タンク全体を覆う蓋を閉め、熱を閉じ込めて焙煎していきます。
ガスは火力が安定していますが、炭はムラがあり、焙煎をいつ終えるのか見極めが難しい。
しかし、田村さんは「ガスは水蒸気が発生して豆が水っぽくなる。遠赤外線で焼く炭は余分な水分を与えず、カラッと仕上がる」と炭火の利点を強調します。
焙煎の時間は豆の量や、屋外で行うため、風にも影響を受けたりしますが、およそ17~18分。
ただ、時計ではなく、煙の出方や豆から出る音に注意を払い、豆を引き出すタイミングを決めます。煙の量が増えてくると、勝負時とばかりに田村さんが集中した表情になっていきました。
タイミングを図る上で重要なのが音。焙煎が進んでいくと、豆がパチパチするといいます。その後、音が消え、再び音がなって間もなくが豆を引き出すタイミング。
焙煎を終えた豆は、黒くなり、コーヒー油によって表面がツヤツヤ。薄皮の焼けカス(チャフ)を飛ばし、冷却するため、下に扇風機が取り付けられています。手作りの焙煎機には、多くの工夫がちりばめられていると、感心してしまいました。
早速、焙煎したばかりのコーヒーをアイスでいだだきました。十分に深煎りしているため、酸味はなく、濃い味わい。それでいて、刺々しさがなく、丸みがあります。炭火を使っているため、炭の香りもしました。
この日、焙煎した豆は主力の「マリドンブレンド」(100グラム250円)として販売しています。これだけの手間をかけながら、この価格はお得感があります。
マリドンコーヒー 前橋市上新田町977-2 水曜定休 営業時間11~17時